空はずっと近くにあるものだと思っていた。
手を伸ばしたら、掴めないけど掴める、そんな感覚。
だけどそれは、私の単なる錯覚でしか無くて。
空は本当はとても遠い存在(モノ)だと気づくのだった。
――カランカラン。
校長先生が鳴らすお決まりの授業終了の鐘が鳴る。
それが合図となり、いつものメンバーが私を中心にして集まってきた。
「ねぇ魅ぃちゃん、今日の部活は何かな、かな?」
机の上に両手を付きながら、レナが尋ねてくる。
恐らくは部員皆の疑問であろう。私は椅子に深く腰掛け、腕を組みながら応えた。
「そうだねぇ……最近はマンネリして来てるから、ここで一発大きいことがしたいんだよねぇ」
「ああ、確かにな」
同意するように圭ちゃんが頷く。
「では今回の部活はどうなさいますの?」
沙都子の疑問に私達は一斉に唸り出した。
いつも部活の内容は私の気まぐれにより決まっている。けれど、今回ばかりは私の気まぐれもあまり働かないらしく、皆に混じって喉を唸らせるだけだった。
「みぃ、羽入が提案があるそうなのです」
突然の梨花ちゃんの言葉に、皆は一斉にそちらを向いた。
「あぅあぅ、梨花ぁ……」
見ると羽入が梨花ちゃんの背中に隠れてあぅあぅと呟きながらおろおろしている。
何か案があるならありがたい。すぐにでも聞きたいところだ。
しかし私はあまり彼女を刺激しないように注意しながら声を掛ける。
解ったことだが、羽入はどうにもコミュニケーションと言うものになれていないらしい。梨花ちゃんとは親戚同士仲が良いからか普通なのだが、私達となるとどうにも緊張してしまうらしいのだ。
「羽入、何かあるなら聞くけど?」
山狗との対決の時に見せたダークホースぶりはどこ行ったんだろ、と言うことになりかねないが。
梨花ちゃんを助けるために一生懸命だったんだと納得しておこう。
「あぅあぅ。興宮でゲーム大会がやりたいのです」
消え入りそうな声で言う。ゲーム大会か……確か以前にもやった覚えはある。――あれ、私ゲーム大会なんてやったっけ? なんで覚えがあるなんて。……まぁいいか。
ふむ、それにしてもゲーム大会か。
「なるほど、興宮の子供達も巻き込んでの部活か、面白いじゃない! ナイスアイディアだよ羽入、流石は我が部活メンバーのダークホースなだけはあるね!」
「あ、あぅあぅ」
私が親指をぐっと立てると、羽入もやや狼狽しながらもそれに応えてきた。
あー、なんか燃えてきたぁ!
「へー、ゲーム大会か。面白そうじゃないか!」
「うん、今までよりたくさん盛り上がれそうだね♪」
「をーっほっほっほ、腕が鳴りましてよぉ~!」
「よし、今からじゃ色々準備が足りない。3日後、興宮のおもちゃ屋で集合と言うことでよろしいだろうか!」
『おお―――!!』
異議は無し。と言うことで、私は早速親戚の善郎おじさんが経営しているおもちゃ屋さんに向かうことにするのだった。
くくく、なんだか面白いことになりそうだよ!
■ ■ ■
と言うわけで。
今日の部活は羽入の提案によりゲーム大会に決定。
部長である魅音は早速興宮に行っていろいろと準備してくるみたいだ。
そんな俺はレナと一緒にいつものように帰路に着いていた。
「それにしても楽しみだよな、部活!」
「うん、そうだね。レナ、なんだか今からわくわくして来たよ!」
「ああ、俺もだぜ!」
あいつのことだ。絶対面白くしてくれるに決まっている。
「羽入ちゃんに感謝だね」
「ああ、そうだな。羽入様様だな」
古手羽入。俺達部活メンバーの仲間に入った期待の新人。
ちょっとおどおどしていて、緊張が高まると「あぅあぅ」と謎の言葉でしか話せなくなるが(どうも梨花ちゃんは理解しているらしい。謎だ)、芯は太く、いざと云う時あっと驚く行動に出る。
それ故に、部活メンバーのダークホースとして君臨しているのだ。
「部活メンバーのダークホースといえば俺の筈だったのに、すっかりお役所御免って感じだぜ」
「あははは。圭一くんは『口先の魔術師』っていう立派な二つ名があるじゃない♪」
嬉々として云うレナ。ああ、やっぱり俺はその二つ名で決まりなのか。
別に嫌と言うわけじゃないんだけどな。
ふとレナとの会話が止まる。
けれどそれは、自然に訪れることで。不快感は無い。
空を見上げる。雲ひとつ無い青い空が暖かい風を送ってくる。
もうすぐ、夏が終わろうとしていた。
「ちょっくら、魅音の様子でも見てくるかな」
ほんの、好奇心が働いた瞬間だった。
今頃魅音は、どんな風に頑張っているのかを。
「……良いんじゃないかな」
だから。
レナがこんな風に頷くのに、少し違和感があった。
けれど、その違和感に俺は最後まで気づかなくて。
「うん、魅ぃちゃんきっと喜ぶよ」
”喜ぶ”。
「お、おいおいレナ。驚くの間違いじゃないのか~?」
「そうかもねそうかもね、あははは」
くるくると両手で鞄を持ちながら回転し、先へと進むレナ。
ふわりとスカートが靡き、その綺麗な太股が露になる。
「変なヤツだな」
溜息交じりに苦笑しながら、俺はレナの背を追うように歩き出すのだった。
■ ■ ■
「――と言うわけなんだよ、叔父さん」
ここは興宮にあるおもちゃ屋さん。園崎経由のお店であり、親戚である善郎おじさんが経営しているお店だ。
カードゲームにボードゲーム、非電源ゲームに電源ゲームなど、基本はなんでも揃っている。
私がいつも部活で使うゲームも、大抵はここから仕入れているのが多い。
「なるほど、ゲーム大会か」
早速、今日の放課後話していたゲーム大会のことをおじさんに話してみた。
どれだけ内容が盛り上がるものであろうと、それに同意してくれるかどうかは別問題だ。お店に迷惑が掛からないとも限らない。
「面白そうじゃないか。どんどんやりたまえ!」
――が、あっさりと善郎おじさんはOKを出してくれた。
「さんきゅーおじさん! でさ、3日後、この奥にある部屋を使わせて欲しいんだけど」
「ああいいよ。それと、大会と言うからには何か賞品が欲しいところだね」
賞品か。何か物々があった方が参加者も増えてもっと盛り上がるかも知れない。
私は思案する。ここにあるゲーム……いや、それは負けた人が罰ゲームで買うと言うのが良いかも知れない。おじさん側は儲かるしね。
となると……賞品より賞金の方が良いかも。
さらに私が自腹で出すとするなら、皆は私が本気を出していると思い、特に部活メンバーの皆はより本気で掛かってくるだろう。
私の本気に臆するならそれまで。尚も挑んでくるなら見所ありだ。
「決めたよ、おじさん!」
くっくっく、さあ、面白くなりそうじゃないか!
■ ■ ■
興宮に着くと、俺はわき目も振らずにおもちゃ屋へと向かった。
すると魅音が店から外へと出てくるところだった。どうやら終わった後らしいな。
「よう、魅音」
が、そのまま帰るのもあれなので、取り敢えず声は掛けておくことにする。
「け、圭ちゃん!?」
おお、魅音のヤツかなり驚いているな。面白い。
「え、なんで圭ちゃんがここに?」
「ちょっくら様子を見にな。部長はどれだけ頑張っているのかなぁ~と」
「そ、そうなんだ」
魅音がなんだか顔を赤くして照れたような笑いで言った。
ん、熱でもあるのか。こいつ、時々はりきり過ぎるところがあるからな。
「おや魅音ちゃん、それに圭一君も」
店の扉から顔を覗かせるようにして、頭にバンダナを巻き、エプロンを着た男性が現れた。
「あ、おじさん、こんばんは」
「ああ、こんばんは。学校の帰りに寄るなんて不良だね」
あはは。苦笑いで誤魔化しておこう。
「それとも……ふむ、ふむふむ」
と、善郎おじさんはいきなり俺と魅音を交互で見て一人しきりに頷き出した。
一体何なんだ?
「なるほどねぇ! いやー圭一君もスミに置けないなぁ~」
「はぁ?」
がしっと俺の肩に腕を回しながらくっ付いて来るおじさん。なんだ、一体何なんだ?
おじさんはなにやら不気味とも言えるぐらいの笑みで、俺のわき腹を小突くように言った。
「魅音ちゃんに会いに来たんだろ? ニクイね~」
「「な!?」」
俺と魅音の短い声が見事にシンクロした。いや、問題はそこじゃなくてだな。
「善郎おじさん、何を!?」
「あ、あの俺は別に!」
なんだ。なんで顔が赤いんだ俺!?
……そう言えば、魅音もどこかしら顔が赤かった。と言うか今もだ。
俺まで熱が出たってのか。
いやマテ。自分の体のことは自分が良く解っている。
これは熱なんかじゃない。でも、熱なんかよりもっともっと重要で、そして一度掛かったらなかなか治らない病でもある。
「俺は単に魅音の様子を見に来ただけで、そんな積もりは全然!」
必死になって誤魔化し続ける俺。
何を言っている、前原圭一。様子を見に来た、それだけで理由は十分じゃないのか。
「冗談だよ、ちょっと言ってみただけさ」
ああ、善郎おじさんは本当に冗談で言っただけだろう。
けれど俺は気づいてしまった。自分の思いに。
決して逃げてはいけない、一度踏み込んだら決して逃げてはいけない道に。
それはずっと前から解っていたことなのかも知れない。
あの時レナに感じた違和感のことも。
俺は激しく鈍感だから。二人が持っていた感情にも今になってようやく気づいて。
だけど、―――俺は。
「じゃ、俺……帰るな」
踵を返す。心臓が煩く鳴り響く。
今になって、心臓が高く鼓動していることに気づくなんてな。
もしかしたら、魅音と話している間ずっとだったのか?
「あ、うん。じゃあね圭ちゃん」
「おう!」
魅音が手を振る。俺もそれに応えるように手を振る。
歩き出しながら心の中で呟いた。……どうやら俺は、……園崎魅音が好きみたいだ。
■ ■ ■
遠ざかる圭ちゃんの背中を見ながら、私は短く溜息を吐く。
私の顔が赤くなってるの、圭ちゃんに気づかれたかな? ……大丈夫かな?
まだ心臓がドキドキ言ってる。おじさんがあんな風にからかうからいけないんだ。
明日、学校でいつもの顔して会えるかな。
■ ■ ■
そして時は過ぎて三日後。いよいよ部活の日がやってきた。
レナと魅音と待ち合わせし、自転車を飛ばして興宮へ。
今回の部活の会場となるおもちゃ屋さんに着くと、既に梨花ちゃんに沙都子、そして羽入がそこにいた。
「遅いですわよ皆さん」
「あぅあぅ、待ち草臥れたのですよー」
沙都子と羽入が揃って不満の声を出す。
梨花ちゃんは相変わらずにこにこ笑って嬉しそうだが。
「あはは、ごめんね沙都子ちゃん、梨花ちゃん、羽入ちゃん♪」
「まぁまぁ。――さ、入って入って」
魅音に連れられて、俺たちは店の中へと入っていく。
中は当然のごとくおもちゃがたくさんあって、さらに魅音は奥へと進んでいく。
「なんか、やけに人が多いな」
もしかして、こいつらも参加者なのだろうか。
奥の部屋は広く、「ゲーム大会興宮店」と横に書かれた垂れ幕が飾ってあった。
ひぃむぅみぃ、どうやら参加者は俺達部活メンバーを含めた16人のようだ。
「ここが部活の会場か……」
「驚いた? 昨日善郎おじさんと相談してね。ここを使わせてもらうことにしたんだ」
もっとも、客寄せイベントってことでたまに使わせて貰っているけどね、と魅音は笑う。
「そして優勝賞金は5万円!」
ご!?
「ごまんえん!?」
魅音のヤツ、恥も外聞も捨てるぐらい本気なのか!
そう呟いた時、沙都子が後ろから声を掛けたきた。
「知らないんですの? 賞金の5万円は魅音さんの自腹でしてよ」
「何ぃ!?」
間違いない。魅音のヤツ……本気だ。
自らの内に存在する鬼を曝け出し、本気を見せ、相手の出方を伺うって寸法か!
良いぜ魅音。お前が本気を出すのなら、俺も本気を出してやるぜぇ!!
「あぅあぅ、圭一と魅音が本気なのです」
「あら、あんたは本気じゃないの?」
「僕も本気出すですよ。そろそろ罰ゲーム常連から脱出したいのです!」
「くすくす、頑張りなさい」
……いや、それにしても。
なんで梨花ちゃんは羽入と話す時だけ口調変わるんだろうな。
■ ■ ■
魅音によるルールの説明も終わり、いよいよ試合開始となった。
俺達の卓は100万長者ゲーム。ルーレットを回してコマを進ませゴールを目指す。最後に一番お金を持っているヤツが勝ちだ。
ゲームは兼ねがね順調だった。
俺の相手は富田君と岡村君。緒戦は学校の後輩。与しやすい相手だ。
と、最初はそう思っていたわけで。
「1、2、3、4。出産祝い。全員から5千$貰う」
「1、2、3、4、5。ボーナス。銀行から5万$貰う!」
「1、2、3。出世コースに進む!」
あ、あれ? ちょっと待て。俺だけ良いマスに止まらないぞ……。
そうか。これは完全なる運のゲーム。いかさまの仕様も何もない。運に任せる以外、何が!
やばい、他の部員はどんな感じだ!?
俺は他の卓に視線を移す。最初は魅音の卓……って、あいつコーヒーなんか飲んでるし。まさかもう決着したのか!? 流石は無敗の帝王……。
「って、感心している場合じゃない。やばいぞ」
スパパパーン!!
いきなり背後から聞こえた甲高い音に、俺は振り向いた。
「このカルタの絵、かぁいい~お持ち帰り~♪」
レナの卓はカルタ取りのようだ。見るとカルタの絵柄、「萌え」が強調された可愛らしい女の子のデザインが主となっている。
かぁいいモードのレナは半端じゃない。神速のレナ……相変わらずだぜ。
「カードの配置も全て覚えた。悪いな北条、勝たせてもらうぜ」
沙都子の卓は申請衰弱のようだ。沙都子と向かい合うように座っているヤツが自信たっぷりに挑発するように言う。
……ふ、甘いな。俺は勝利を確信して背中を向ける。見なくても解るのだ。
「な、何故だ!? 確かにここはハートのAだったはず!」
「残念でしたわね。ハートのAはこちらでございましてよ」
トラップマスター沙都子。カードをイカサマですり替えてやがったな。
さて、梨花ちゃんの卓は……って、なんじゃありゃあ!?
「わー、釣れましたなのですー」
「すごいよ梨花ちゅわ~ん(でれ~)」
「もう梨花ちゃんの優勝だよ~(でれ~)」
なんと言うか、他の卓とは今まで以上に空気が違っていた。
甘ったるいというかのんびりと言うか萌えと言うか。
そう、萌え。その一言が梨花ちゃんの卓を支配しているのだ。
梨花ちゃんの卓は魚釣りゲームだが、既に勝負は着いたも同然だった。
「萌え落しの梨花ちゃん……流石だな」
最後は期待のホープ、羽入のところか。
ゲームは……どうやらババ抜きのようだ。
見たところ、ババ抜きはある意味ポーカーフェイスが苦手な羽入にとっては苦しいものになるのかと思ったのだが。
「あぅあぅ」
悲しげな表情、ババを引いたようだな。なんて解りやすい。
相手がカードを選ぼうとしている。右端に手が寄った瞬間、ぱぁっと笑顔になった。それがババか。相手はすぐに手の位置を変え……。
「あぅあぅあぅあぅあぅ……」
は、羽入のヤツ、何かを訴える眼差しを!?
きらきらした目で相手を見つめている。どうするんだ相手は? あ、ババ選んだ。
結局羽入の卓でも、情に訴える戦法で見事に羽入が勝利を得た。
――羽入、恐ろしいヤツだぜ!
まずい。まずいまずい! 皆勝利確定かよ!
俺だけ負けたら洒落にならねえ! どうする。 くそっ!!
「圭一くん、苦戦かな、かな?」
「し、仕方無いだろ! このゲーム、ルーレット回す以外に何も作戦が無いんだぜ!?」
ああ、そうだ。
それ以外に一体何が出来るって言うんだ。気合でルーレットをコントロールしろと?
「失望したよ、圭ちゃん」
溜息と同時に魅音が吐き捨てるように言った。
失望? 魅音が、俺に?
「皆本気なのに。圭ちゃんだけ本気になってくれなかったね」
本気? 本気ってなんだよ? 俺が本気じゃないってなんだよ!
聞きたくない。聞きたくなかった。好きだと自覚した相手から、そんな言葉聞きたくなかった。
真っ暗になる。何もかもが、嫌になる。
結局俺は何も出来ずに、勝負は負けとなるのだった。
■ ■ ■
勝負は圭一の負けに終わった。
盛り上がりなんて無い。周りもその空気を知ってか、ゲーム大会のテンションは低かった。
僕はこう言うことには弱く、ただあぅあぅとおろおろするばかりで。
――初めてのことだった。
圭一が魅音に失望したと言われ、戦意を失い敗北するのは。
いつもの彼ならすぐにその達者な口先を駆使し、富田と岡村を飼い慣らして見事に勝利を収めるのに。
「きっと、圭一の中で魅音の存在が変わり始めているのよ」
梨花が言うにはそうらしい。それは数千年生きた僕でも解る。
魅音が圭一のことを好きなのは事実だ。多分レナも知っているだろう。
沙都子も……知らないフリしているが、心の中では薄々気づいているに違いない。
時は流れる。
時は移りゆく。
人の気持ちも、移り変わっていく。
レナ、魅音、圭一。
三人の関係が今後どうなるのかは、解らない。
「皆、お疲れ様。後半はちょっとあれだったけど、大会は盛り上がったよ。お礼に」
店から出てきた善郎のおじさんが複数の紙袋を部活メンバーに渡していく。
中身は解っている。人形だ。
そして圭一のだけ、普通より可愛いフランス人形みたいなのが出てくるのだ。
確か前の世界ではこの人形を圭一が魅音に渡さなかったために、魅音が詩音に愚痴を零していつしか詩音が狂気へと変貌していってしまう。
でも、今はもう運命の日を乗り越えた後だ。その心配は無い……と思いたい。
「わあ、圭一君の人形かぁいい~☆」
「あらあら、ほんとですわね」
「みぃ、フリフリなのですよ♪」
皆それぞれに色んな反応をしているが、やはり女の子。可愛い人形には目が無いようだ。
梨花でさえ、わずかばかりだが欲しいなぁ的オーラを出している。
「あ、ああ。そうだな。可愛いな」
しかし圭一は、人形を持ったままずっと俯いたままだ。
誰かに渡す、なんてそんな空気は微塵も感じられない。
「じゃあ俺帰るよ。おじさん、人形ありがとう。それじゃ」
皆が呼び止めるよりも先に、圭一は袋に入った人形を自転車の籠に入れ、ペダルを漕いでその場を逃げるようにして去ってしまった。
残された僕たちはただ、遠ざかる彼の背中を見続けるしかなかった。
と言うわけで、ひぐらしSSです。3月1日の魅ぃの日記念に書いたSSですが、まだ未完成です。
完成したら続きをアップしますです。
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